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2013年度総論

2012年を振り返ると経済においても政治においても混迷した年だったのではないか。東日本大震災から2年近くが経過したが、未だ被災地では復興が思うように進まず、津波で生じたがれきの山は岩手・宮城の両県だけで2000万トンに達しており、処理には20年近くの年月がかかるといわれている。震災復興に向けての課題は多いが、具体的な計画は少なく、政治の混迷も相まって復興への道のりは遠く険しいものになっている。また、震災後に炉心溶融を起こした福島原発についても未だに収束が見えない状況にあり、そんな中での大飯原発の再稼働は地域住民だけでなく、多くの日本人の不安を煽り、脱原発デモが日本中の至る所で行われた。
経済においては日本の成長産業として牽引していた大手家電メーカーが軒並み過去最悪の業績に陥り、大規模なリストラや工場閉鎖が次々と行われ、依然として景気回復の糸口は見えていない。そんな中8月には消費増税法案が参院で可決・成立し、今後の生活への不安が懸念される。
政治の世界では、2009年に政権交代を果たした民主党は、震災復興と原発問題の対応、隣国との外交問題に対する批判から年末の衆議院総選挙で惨敗し3年あまりで再び自民党政権となった。また、北朝鮮・韓国・中国と日本の隣国においても政治のトップが交代し、今後、これらの国との外交に変化が生じるのではないかと考えられる。
韓国においては、李 明博 前大統領が8月に竹島に上陸したことで日本国内からの批判の声が上がり、日韓関係が悪化した。中国においては、日本政府が9月に尖閣諸島にある3島を国有化したことが中国各地の反日デモを引き起こし、日本企業が暴徒化したデモ集団に襲われるという事件も生じた。12月には北朝鮮が人口衛星打ち上げと称し長距離弾道ミサイルを発射し、沖縄上空を通過した際は一時緊迫した事態になった。このように昨年は日本近隣諸国でナショナリズムが高まった年でもあった。
そして国内では、元オウム真理教事件の特別手配犯である平田信、菊池直子、高橋克也の3容疑者が逮捕され、教団への強制捜査から17年が経ち、ようやくオウム事件の捜査が完全に終結する見通しになった。4月には群馬県藤岡市の関越自動車道路で防音壁に夜行バスが激突し、乗客7名が死亡するという大惨事になった。また、12月には中央自動車道の笹子トンネルでトンネル天井板落下事故が起き、9名の尊い命が犠牲となった。今まで誰もが「安全」と信じ切って利用していたものが突然として人の命を奪い、我々の日常生活がいかに脆く危ういものかを痛感させられた事件であった。
そんな中、明るい話題としては7月から開催されたロンドンオリンピックが挙げられる。日本史上最多の38個のメダルを獲得し、多くの日本人に希望と勇気を与えた。また、5月に展望台として開業した東京スカイツリーは震災後の復興のシンボルとして、開業以来多くの人で賑わっている。科学の分野ではiPS細胞の研究で京都大学の山中教授がノーベル生理学・医学賞を受賞され、研究の成果が難病の原因解明や治療、新薬開発につながるのではないかと人々の関心を高めている。

身近なできごととして、年末の衆議院総選挙が挙げられる。新政党が多数旗揚げし、統合や分裂を繰り返す中で、多様化した意見を持つ13もの政党での選挙戦が繰り広げられた。マスコミの世論調査などでは、政権公約が多様化しすぎて、自らの将来を託せる政党が見つからない、という意見が挙がった。このように、色々な物事が多種・多様化した世の中で、自分の想いをしっかりと持つことが必要ではないか。
フォーゲルとして関わる子どもをとりまく環境も決してよい状態とは言えない。2011年10月に滋賀県大津市の中学生がいじめを理由に自殺するという事件が発生。学校や教育委員会がいじめの存在を認めない姿勢を崩さないなど、物議を醸した。学力を重視し、勉強以外での社会性や協調性などにおいて、生徒と教師とのコミュニケーションが蔑ろにされているために発生してしまった事件ではないだろうか。また近年では、公園においても遊具が撤去されたり「ボール遊び禁止」の看板が立てられたりし、子どもがのびのびと遊び、育つ環境が縮小されてきている。このような環境の中、青少年育成活動が担う役割が大きくなっているのではないか。

教団では、2012年より、「神人あいよかけよの生活運動」が発足された。立教150年を経て、今後一層に立教の意義と精神を確かにしながら、教主金光様がお示しくださった「神人の道」を頂き、一人ひとりの生活の中に神様の喜ばれる信心の実践が現されていくことが願いの基盤にある。
そして、2013年。教祖様が神上がられて130年のお年柄をお迎えした。肉体がなくなったことで、時間や場所にとらわれることなく、「生神金光大神様」とお唱えしておすがりすることによって願う氏子を助けてくださる、永世生きどおしの生神金光大神様のお働きが現されての130年である。このお年柄を通して、教祖様の信心をさらに求め頂き、現していくことが必要である。
フォーゲル連盟としてもこの教祖130年のお年柄を頂き、フォーゲルの究極の願いである「教祖の生きられ方を世界の青少年に伝える」ということを今一度考え、フォーゲル活動を推進していきたい。そして、フォーゲルリーダー、隊員共々に、やがては信心をしておかげを頂いて生きていく人に育っていってほしいと願う。

フォーゲルでは、2012年を通して、全ての物事において原点に立ち返り、「活動の意義、活動の願い」を自ら練り出すことが大切であるということを学ばせて頂いた。
2012年、フォーゲルリーダー育成を目的としたフォーゲル運動研修会を開催するにあたり、フォーゲルリーダーが抱える現状の課題について各地方連盟からヒアリングした。その結果、「活動にその時だけの楽しさだけを求め、何故、難しいことに取り組んでいくのか理解できていない」「何事も受け身であり、活動を良くしていこうとする様子がない」といった課題が明らかになったが、これらの根底には「リーダー一人一人が何に向かってフォーゲルをしているのか見えていないこと」があるということに気付かされた。
フォーゲル憲章にあるように、フォーゲル活動は、誰かにやらされているものではない。自ら生み出し、推し進めて行こうとする者が集まって成り立っている。運動研修会の企画を通して、この精神こそが、今のフォーゲルに必要なものであると確信した。一人一人のリーダーが、自ら求め、考え、行動できる「自主・自立」の精神を持ったリーダーになれるように願い続けることで、「フォーゲルの意義」を自ら練り出すことができ、活動の輪が広がっていくのではないか。

「自主・自立」は自ら考え、行動することであるが、ただ欲求に従い、思うままに行動するものではない。フォーゲルは自分の力だけで活動しているのではなく、神様と共に活動させていただいている。神様に願うことにより、安心感の中で活動することができる。第62回連盟総会・役員改選。理事メンバーによる総長の互選は、長い沈黙が続いた。「総長」という名前のプレッシャーの中、それぞれがどうすればよいか分からないという不安に包まれた。そんな中、現総長が神様に願い、お取次を頂き、神様や多くの人と関わっていく安心感の中で、総長のお役を受けさせて頂くことができた。そして、理事メンバーはその想いを受け、それぞれのお役を受けさせて頂く決心をした。この「神様に願うこと」を通して、神様がついていてくださるという安心感の中で、自ら決心し、自信を持って活動を進めることができるようになると考える。
神様に願いを立てたならば、考え、行動に移したい。フォーゲルの活動は、ただ願うだけでは終わらない。2012年第1回理事会では、第50回ソアリングキャンプの隊長候補を決定した。隊長をお願いするに当たり、当初は別の日を予定していたが、「今すぐにお願いさせていただきたい」との意見があり、その当日お願いさせていただき、受けて頂くことができた。隊集会において、願いを持ち、計画を立て、活動を進めていくことも「考え、行動すること」の一端にあるのではないだろうか。自ら考え、自信をもって行動することが、フォーゲル運動の原動力である。
また、この自主・自立の精神は、各個人で取り組むものと考えられがちであるが、フォーゲル活動は一人で行っているものではない。様々な考えや価値観を持つ現代では、多くの人と関わるほど意見が異なり、ぶつかり合うこともあるだろう。しかし、そのことを恐れず、自ら人と関わっていき、お互い話し合い、納得していくことで、みんなの願いが一つになり、よりよい活動が展開されるのではないか。「伝え、つながること」を通して、お互いを祈り、助け合い、切磋琢磨し、お育て頂くためにも、多くの人と活動していきたい。
ここまで「神様に願うこと」、「考え、行動すること」、「伝え、つながること」について述べてきた。2013年は、全ての活動において、この流れを意識していきたい。

教祖130年のお年柄を通して、教祖様があっての私たちであるということに対してお礼をし、自主・自立の精神をもって、教祖様の生きられ方を求め、伝える活動に取り組んでいきたい。教祖様は、身の周りで次々に起こった困難の中で、信心辛抱の徳をもって天地金乃神様を頂かれた。このことを通して、常日頃から神様に願い、行動していくことが大切であることを理解する。改めて教祖様の生きられ方を意識しつつ、自ら進んでフォーゲル活動をすることで、天地に生かされ生きている私たちであることに気付き、全ての物事に対しお礼の心が生まれ、信心しておかげを頂く喜びに目覚める。そうすることで、「信心をしておかげを頂いて生きていく人に育ってほしい」というフォーゲルの願いにより近づいていくと考える。

この自主・自立の精神は、何もフォーゲル活動だけに限られたことではない。人と人との関わり、社会生活、ひいては信心において、とても重要である。我ら金光大神一乃弟子、一人一人の自主自立の精神を求めていくことで神様を求め、天地に生かされ生きている私たちであることに気付き、おかげを頂いていけるよう活動を進めていきたい。